2026年5月14日、東京大学 武田先端知ビル 武田ホールで開催された電子情報通信学会 集積回路研究専門委員会(IEICE ICD)主催の「LSIとシステムのワークショップ2026(LSI-WS 2026)」のパネルセッション「半導体の世界で描く未来 ― 求められる力と広がるキャリア」にパネリストとして登壇しました。

半導体チップが実装された基板

本セッションは池田 誠 教授(東京大学)がモデレータを務め、井上 弘士 教授(九州大学)、入江 和幸 氏(Global Unichip Japan)、大島 俊 氏(日立製作所)、貴島 和美 氏(Rapidus)、堀池 成一郎 氏(アルチップ・テクノロジーズ)の5名と、当研究室の大橋 匠(東京科学大学)がパネリストとして登壇しました。学生・若手研究者・技術者に加え、異分野からの転職やリスキリングを通じて半導体分野への参入を考える方々を主な聴講者として想定し、「半導体の世界でどのような未来が描けるのか」を多角的に議論しました。

ポジショントークと3つの議題

各パネリストの2分間ポジショントークの後、討論は次の3つの議題で進行しました。

  1. 半導体業界にはどんな仕事があるか — 多様な役割と、専門を越えて活躍できる場
  2. どう入る・どう伸びるか — 新卒、若手、転職、リスキリングそれぞれの入口と成長
  3. 半導体の世界でどんなキャリアと未来が描けるか — 求められる力、人材流動、業界の展望

最後の議題3で、大橋は「これからの半導体人材」について以下の論点を提示しました。

半導体設計オーケストレーターという人材像

日本の名目 GDP は約 600 兆円規模ですが、国内半導体産業の売上高は 2020 年時点で約 5 兆円にとどまっていました。経済産業省は「半導体・デジタル産業戦略」のもと、2030 年に 15 兆円超、2040 年に 40 兆円規模への成長を目指しており、その文脈で Rapidus などの先端製造を担う事業体が立ち上がっています。

しかし、製造能力を上げるだけでは、付加価値の薄い受託加工に留まり、目標値への到達は難しい。まず必要なのは、製造の出口に高付加価値の設計を結びつけることです。それでも、チップそのものの市場は GDP の中ではごく一部にすぎません。これからの伸びしろの中心は、残りの圧倒的に大きい産業領域 — モビリティ、医療、農業、エネルギー、社会インフラ — に積極的に飛び込み、そこで顕在化する社会課題を半導体設計に翻訳できる人材です。

大橋は、このような人材像を 「半導体設計オーケストレーター」 と呼びました。半導体を設計する力に加えて、社会システムまで視野を広げ、産業横断で問いを設計し、関係者を巻き込んで実装まで導く力です。

おわりに

本研究室では、トランジションデザインを軸に「技術と社会の接続点をデザインする」研究と人材育成を進めています。半導体は、社会のあらゆる領域に組み込まれていく基盤技術であり、設計・実装の出口設計が今後ますます問われる領域です。本パネルでの議論を、産学を越えた共創の中で引き続き発展させていきます。